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敬愛なるベートーヴェン


■ストーリー

"第九"の初演4日前。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(エド・ハリス)は、
まだ合唱パートが完成してなかった。
途方に暮れていたベートーヴェンの音楽出版社シュレンマー(ラルフ・ライアック)は、
音楽学校にベートーヴェンのコピスト(写譜師:作曲家が書いた楽譜を清書する職業)
として一番優秀な生徒を依頼していた。
そこに現れたのは作曲家を志す若き女性アンナ・ホルツ(ダイアン・クルーガー)だったのだ。
思いも寄らない女性コピストの登場に、困惑するシュレンマー。
彼は、今回の仕事相手は「あの"野獣"ベートーヴェンだぞ」と告げ、アンナを追い返そうとするが、 ベートーヴェンの名を聞いたアンナは、期待のあまり目を輝かせてしまう。
アンナは、ベートーヴェンを尊敬し彼の音楽を愛していたのだ。
早速アンナは、シュレンマーに代わって写譜を始め、
出来上がった原稿を持ってベートーヴェンのアトリエを訪ねて行く。
 期待に反し、女性のコピストが来たことに激怒するベートーヴェンは、
彼女の写譜した原稿を見るなり、音符の写し間違いを指摘する。
そんなベートーヴェンに対し、「あなたなら、ここは長調にしません。だから短調に修正したんです」と、
きっぱり言い切るアンナ。その一言で、ベートーヴェンには、アンナがただならぬ才能の持ち主であり、
同時に自分の音楽を深く理解していることがわかった。
「私の音楽をこれほど認めてくれるとは」と嫌味を言いながらも、
彼はアンナの才能を認め写譜の仕事をまかせることにした。
 翌日からベートーヴェンの部屋に出入りするアンナは、
"第九交響曲"の誕生に手を貸す喜びを味わうかたわら、尊敬する巨匠の孤独な人生を垣間見ることになる。
ベートーヴェンは、甥のカールを溺愛し、ピアニストにさせようとしていたが、
才能のなさを自覚するカール(ジョー・アンダーソン)にとって、叔父の愛情と期待は重荷だったのだ。



 ついに迎えた"第九"初演の日。ドレスを身にまとい劇場へやって来たアンナは、
婚約者のマルティン(マシュー・グード)が用意した席に座ろうとした時、シュレンマーが現れる。
アンナを舞台裏へと連れていった彼は、指揮棒を振るベートーヴェンにテンポの合図を送る役目を、
代わりにアンナに頼みたいと懇願する。
そのアンナが舞台裏で見たのは、耳の不自由さで満足に指揮棒を振れない不安と恐怖に駆られた、
ベートーヴェンの姿だった。アンナは、そっと手を取り、「私がいます」と励まし、
その言葉に勇気を取り戻したベートーヴェンは、アンナに楽譜を手渡してオーケストラの指揮台に立つ。
そしてアンナは、バイオリン奏者たちの後ろの足元にうずくまった。
指揮棒を振り上げようとするベートーヴェンの目が、アンナの視線をとらえる。
その目を力強く見返しながら、静かに合図を送るアンナ。
こうして二人三脚の指揮による歴史に残る"第九"の演奏が始まった。
演奏が終盤になるにつれ、観客は"第九"の世界に魅了され、
いつの間にか甥のカールまでもが現れ演奏に聞き入っていた。
第4楽章「歓喜の歌」の演奏終了と共に鳴り響く拍手喝采の音。総立ちの観客、自然と涙する甥カール、
劇場中にこだまする大歓声、指揮をやり終えたベートーヴェンに届いていないことに気づいたアンナは、
指揮台のベートーヴェンを客席に振り向かせた。
観客の熱狂ぶりを見て大喜びのベートーヴェンは、「2人でやり遂げた!」と、アンナに賞賛の言葉を贈る。
 その興奮がさめやらない翌日、ベートーヴェンに署名入りの"第九"の譜面を贈られ、感激するアンナ。
そこで作曲した曲をベートーヴェンに見せるが、彼の無神経な反応に心を深く傷ついてアパートを飛び出してしまう。
アンナの後ろ姿を見て、自分の過ちに気づいたベートーヴェンは、アンナの下宿先である修道院を訪ね、
楽譜に「この曲を一緒に完成させよう」とメモを添えて許しを請うた。
それ以来、アンナは、ベートーヴェンの指導のもとで曲作りに没頭する。
形式や構成にこだわり、作曲する彼女に、「曲は生き物だ。形を変える雲だ」と教えるベートーヴェン。
心を無にし、魂で音を感じることの大切さを、学んでいくアンナに「君は私になりたがっている」と、ベートーヴェンはアンナへ苦言を呈していた。
そんな中、"第九"に次いで完成した《大フーガ》の演奏会は、演奏の最中に聴衆が次々と席を立ち、
最後まで残っていた大公にまでも「思っていたより耳が悪いんだな」と酷評され、さんざんな結果に終わってしまう。
それを、「予想どおりの結果だ」と強気に受け止めるベートーヴェンだったが、
心労は思いのほか大きく、無人の客席に倒れてしまう......。